AI音声合成で同人音声を作る方法と注意点

AI音声合成技術を使った同人音声制作の方法と注意点を解説。利用可能なツール、品質、法的・倫理的な問題点を整理します。

by ぬまぬま

AI音声の話、避けて通れなくなりました

ぬまぬまです。AI音声合成の話題は、同人音声界隈でも賛否両論あるテーマですよね。僕自身、最初は「いやいや、声優さんの声に勝てるわけないでしょ」と思ってました。正直、今もその気持ちはあります。

でも技術は確実に進歩していて、AI音声合成を活用した同人音声も実際に出てきています。好むと好まざるとにかかわらず、知っておくべきテーマになったというのが2026年現在の状況です。

この記事では、AI音声合成で同人音声を作る方法と、必ず押さえておくべき注意点をできるだけフラットにまとめてみます。

AI音声合成の現状(2026年時点)

できること・できないこと

AI音声合成の技術は数年前と比べると格段に進歩しています。ただし、万能ではありません。

項目現状
通常の会話・ナレーションかなり自然になった
感情表現(喜怒哀楽)ツールによってはそこそこ対応
囁き・ASMR的な表現まだ苦手なツールが多い
息遣い・リップノイズ自然な再現は難しい
長時間の一貫した演技調整が大変だがやれなくはない
キャラクターの個性表現声質の選択肢は増えたが、細かい演技は限界あり

正直なところ、「聴いてすぐAIとわかる」レベルから「言われなければ気づかないかも」レベルまで幅があるのが現状です。ツールの選択と調整の手間で仕上がりが大きく変わります。

利用可能なAI音声合成ツール

主要ツール比較

ツール価格日本語対応商用利用特徴
VOICEVOX無料対応キャラ別に条件ありオープンソース。キャラクターが豊富
COEIROINK無料対応キャラ別に条件ありVOICEVOXと類似。独自キャラクターあり
CoeFont有料(月額サブスク)対応プランによる高品質。感情パラメータの調整が可能
A.I.VOICE有料(買い切り)対応エディション別旧VOICEROID系。安定した品質
ElevenLabs有料(サブスク)対応(多言語)プランによる海外ツール。多言語対応が強み
LMNT有料(サブスク)限定的プランによる海外ツール。音声クローニング機能あり

VOICEVOX——無料で始めるならここから

VOICEVOXは無料で使えるオープンソースの音声合成ソフトです。複数のキャラクター(ずんだもん、四国めたん等)が用意されていて、テキストを入力するとそのキャラクターの声で読み上げてくれます。

良いところ: 完全無料、UIがわかりやすい、キャラクターが多い、コミュニティが活発 気になるところ: キャラクターごとに利用規約が異なる(要確認)、ASMR的な表現は苦手、調整に手間がかかる

CoeFont——品質を求めるなら

CoeFontは有料ですが、品質面では一歩リードしている印象です。感情パラメータを細かく調整できるので、「嬉しそうに」「悲しげに」といった演技指示をある程度再現できます。

月額サブスクでプランごとに文字数の上限があるので、台本の文字数が多いとプランの引き上げが必要になることがあります。台本の文字数カウントで事前に文字数を把握しておくと、プラン選びの参考になります。

海外ツール(ElevenLabs, LMNT等)

海外ツールは英語の品質が非常に高いですが、日本語は対応していても品質にばらつきがあります。海外市場向けの英語音声作品を作るなら選択肢に入りますが、日本語の同人音声を作るなら国産ツールの方が安定していると感じています。

AI音声の品質と限界

通常の会話は合格ライン

ナレーションや日常会話レベルであれば、2026年時点のAI音声は十分な品質に達しています。台本を読み上げるだけの用途なら、実用レベルと言っていいでしょう。

ASMR・感情表現はまだ課題

ここが同人音声にとって一番大きな壁です。

ASMR作品で求められる囁き声、息遣い、リップノイズ、耳元で語りかける親密さ——これらはAI音声にとってまだ難しい領域です。技術は進歩していますが、人間の声優さんの表現力には届いていないというのが正直な感想です。

表現AI音声の対応度
通常会話ほぼ問題なし
ナレーション十分実用レベル
感情的なセリフツールと調整次第
囁き声まだ不自然になりがち
息遣い・吐息自然な再現は難しい
ASMR的なトリガー音SEで補完する必要あり

「人間らしさ」という壁

技術的に音声が自然になっても、「この声の向こうに人がいる」という感覚を再現するのはまた別の話なんですよね。同人音声って、技術的な音質だけじゃなくて、声優さんの存在感や温度感に価値がある。ここがAI音声の最大の課題だと僕は思っています。

法的・倫理的な注意点

これが一番大事です

AI音声合成を使う上で、法的・倫理的な問題を無視するのは絶対にNGです。ここを雑にすると、作品だけでなくサークルの信頼も失います。

各ツールの利用規約

確認項目詳細
商用利用の可否無料ツールでも商用利用に条件がある場合が多い
クレジット表記「VOICEVOX:ずんだもん」のような表記が必須のケースがある
R-18作品での利用キャラクターによっては禁止されている場合がある
音声の二次配布生成した音声の扱いに制限がある場合がある

必ず各ツール・各キャラクターの利用規約を確認してください。 「無料だから自由に使える」は大きな勘違いです。VOICEVOXのキャラクターも、キャラクターごとに利用条件が異なります。

<CalloutBox type="tip">VOICEVOXのキャラクターを使う場合、キャラクターごとの利用規約ページを必ず確認してください。商用利用の条件、クレジット表記の形式、R-18利用の可否はキャラクターによって異なります。「全部同じでしょ」は危険です。</CalloutBox>

DLsiteのAI音声に関するガイドライン

DLsiteではAI生成コンテンツに関するガイドラインが設けられています。AI音声を使用した作品を登録する際は、必ず最新のガイドラインを確認してください。ガイドラインは更新されることがあるので、登録のたびに確認するくらいの慎重さが必要です。

一般的に、AI音声を使用していることの明記を求められる場合があります。使用ツールとキャラクター名の表記も必要になることが多いです。

声優業界との関係性

ここは慎重に書きます。

AI音声合成の発展に対して、声優業界からは懸念の声が上がっています。これは当然の反応だと僕は思っています。声優さんの仕事は技術と経験の積み重ねであり、それがAIで代替されることへの不安は理解できます。

僕が思うのは、AI音声を使うこと自体が悪いのではなく、使い方と姿勢の問題だということです。

やってはいけないことは明確です。特定の声優さんの声を無断でクローニングすること。AI音声であることを隠して「人間の声優が演じた」と偽ること。AI音声を使って声優さんの仕事を不当に安く置き換えようとすること。

これらは技術的にできるかどうかの問題ではなく、倫理の問題です。

人間の声優さんとの使い分け

AI音声が適しているケース

  • プロトタイプ制作(台本の読み合わせ確認)
  • ナレーション部分やシステム音声的な使い方
  • 多言語展開(海外向けの英語版等)
  • 予算が極めて限られている場合のスタートライン

人間の声優さんが圧倒的に強いケース

  • ASMR作品全般(囁き、息遣い、親密さ)
  • 感情表現が重要なドラマ作品
  • キャラクターの個性や魅力が売りの作品
  • リスナーとの「つながり」が価値になる作品

率直に言って、同人音声のメインストリームであるASMR・シチュエーションボイス系では、人間の声優さんの優位性はまだ圧倒的だと思います。AI音声が活きるのは、それ以外の用途や補助的な使い方が中心です。

ハイブリッドという選択肢

メインの演技は声優さん、ナレーション部分やサブキャラクターにAI音声、というハイブリッドな使い方も出てきています。これはコスト面でもクオリティ面でも合理的な選択だと思います。

AI音声のコストメリット

声優依頼との比較

項目声優依頼AI音声(無料ツール)AI音声(有料ツール)
1作品あたりのコスト1〜5万円程度0円数千円程度
修正の容易さ追加依頼が必要即座に修正可能即座に修正可能
制作スピード1〜4週間数時間〜1日数時間〜1日
品質の上限非常に高いツールの限界ありツールの限界あり
表現の幅広い限定的やや広い

コスト面だけ見ればAI音声のメリットは大きいです。特に、台本の推敲段階で「仮の音声」としてAIに読ませてみるのは非常に効率的です。文字で読むのと音声で聴くのでは台本の印象がかなり変わるので、声優さんに依頼する前のチェックとして使うのはおすすめです。

台本の文字数からコスト感を見積もるなら、台本の文字数カウントで確認してみてください。

制作フローの実際

AI音声で同人音声を作る基本フロー

  1. 台本作成: 通常の同人音声と同じ。演技指示はAIのパラメータに置き換える
  2. ツール選択: 作品のジャンルと利用規約を考慮して選ぶ
  3. 音声生成: テキストを入力し、パラメータを調整しながら生成
  4. 調整: イントネーション、間、感情パラメータの微調整(ここが一番時間かかります
  5. 編集: SEの追加、マスタリング等。通常の同人音声制作と同じ工程
  6. 確認: 利用規約の再確認、クレジット表記の準備

調整の手間を甘く見ないでください

「テキストを入れたら一発で完成」と思っていると痛い目を見ます。自然な音声にするためのパラメータ調整は、想像以上に時間がかかります。1文ずつイントネーションを直していく作業は、正直けっこう地道です(声優さんのすごさを実感する瞬間でもあります)。

制作の全体像については同人音声の作り方完全ガイドも参考にしてみてください。

よくある質問

Q. AI音声だけで作品を販売できますか?

技術的には可能です。ただし、使用するツールの利用規約と、販売プラットフォームのガイドラインを必ず確認してください。AI音声であることの明記が必要な場合がほとんどです。また、現時点ではAI音声のみの作品に対するユーザーの目は厳しい傾向があるので、その点は覚悟しておく必要があります。

Q. AI音声作品は売れますか?

正直に言うと、人間の声優さんが演じた作品と比べると販売面ではハンディがあるのが現状です。ただし、価格設定やジャンル選択、コンテンツの企画力次第では十分に勝負できる領域もあります。「AI音声だから売れない」ではなく「AI音声の強みが活きるジャンルで勝負する」という発想が大事だと思います。

Q. 声優さんに失礼じゃないですか?

この問いに対する答えは一つではないと思います。僕の考えでは、AI音声を使うこと自体が失礼なのではなく、使い方の問題です。声優さんの声を無断でクローニングする、AI音声であることを偽る、声優さんの仕事を不当に奪おうとする——これらは明確にアウトです。一方で、利用規約を守り、適切にクレジット表記を行い、AI音声であることを明示した上で作品を作ることは、技術の正当な活用だと考えています。

Q. 将来的にAI音声は人間の声優さんを超えますか?

技術的な品質という意味では、距離は確実に縮まっています。でも「超える」かどうかは、何を基準にするかによりますよね。音質だけならいつか追いつくかもしれません。でも、声優さんの演技に込められた解釈や感情、リスナーとの関係性——こういった部分はAIが数値で再現できるものではないと思っています。共存していく形になるんじゃないかなと。

僕のスタンス

最後に、僕自身のスタンスを正直に書いておきます。

僕はメインの制作では声優さんに依頼しています。声優さんの演技で台本が化ける瞬間が好きですし、それが同人音声の一番の魅力だと思っているからです。

一方で、AI音声合成の技術自体は否定しません。台本のプロトタイプ確認や、新しい表現の実験として使うことはありますし、この技術が発展することで同人音声の裾野が広がる可能性もあると思っています。

大事なのは、ルールを守ること、嘘をつかないこと、リスペクトを忘れないこと。 技術は道具です。どう使うかは僕たち次第です。

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