同人音声の台本の書き方:構成・演技指示・SE指示の基本
台本が同人音声の品質の8割を決めると言われている。基本構成・演技指示・SE指示の書き方、文字数と尺の目安まで、初めて台本を書く方でもすぐ使える実例付きガイドです。
台本が作品の8割を決める、と気づいた話
いきなりですが、同人音声のクオリティは台本で8割決まると僕は思っています。
声優さんの演技力、SEの質、イラスト——どれも大事です。でも台本がダメだと全部ダメになるんですよね。完成した台本はDLsiteに登録する作品ページの紹介文にも活かせます。逆に台本がしっかりしていれば、他の要素が多少弱くても作品として成立します。
僕は同人音声を始めるまで台本なんて一度も書いたことがなかったです。小説ともゲームシナリオとも違う独自のフォーマットがあると知ったのは、作り始めてからでした。(もっと早く知りたかった) 同人音声の制作全体の流れについては同人音声の作り方完全ガイドを参考にしてみてください。台本で使うSE指示の素材選びについてはSE・BGM素材の選び方ガイドもどうぞ。なお、台本の長さと価格の関係はDLsite音声作品の価格帯分析で詳しくまとめています。
この記事では、その「独自のフォーマット」を分解して全部お見せしていきます。
台本の基本構成
ヘッダー情報・トラック分け・セリフ・演技指示・SE指示・間(ま)指示の6要素を押さえれば、台本の骨格はできます。
同人音声の台本は6つの要素で構成されています。
1. ヘッダー情報
冒頭に作品の基本情報を書きます。声優さんに渡す前提なので、ここは過不足なく書いておくのが大事です。
【作品タイトル】○○○○
【ジャンル】癒し / 耳かき
【想定尺】約30分
【キャスト】女性1名
【概要】疲れて帰ってきたリスナーを、幼馴染が耳かきで癒すシチュエーション
2. トラック分け
作品を複数トラックに分割します。
=== Track 01: おかえりなさい(約5分) ===
=== Track 02: 耳かきの準備(約8分) ===
=== Track 03: 耳かき(約12分) ===
=== Track 04: おやすみなさい(約5分) ===
1トラック5〜15分が聴きやすいです。シーンの切り替わりで分けると、リスナーが好きなシーンから聴けるようになるのでおすすめです。
3. セリフ
キャラクターが話す内容。台本の核ですね。
「おかえりー。今日も遅かったね。お疲れ様」
「ねえ、ちょっとこっちおいで? 膝枕してあげるから」
「……ふふ、素直でよろしい」
4. 演技指示——「いい感じに」は禁止です
セリフの前に、声のトーンや感情を括弧で指示します。
(優しく、少し心配そうに)
「大丈夫? 顔色あんまりよくないよ」
(囁くように、耳元で)
「目、閉じてていいからね」
(少し照れながら)
「……べ、別に特別なことじゃないし」
よく使う演技指示:
- (優しく)(囁くように)(耳元で)
- (少し照れて)(楽しそうに)(心配そうに)
- (ゆっくりと)(テンポよく)(間を置いて)
- (小声で)(普通の声量で)(少し大きめに)
演技指示の具体性って、声優さんへの敬意の問題だと思うんですよね。「(いい感じに)」と書くのは正直「あとはよろしく」と丸投げしてるのと同じです。声優さんはエスパーじゃないです。 どんなトーンで、どんな感情で、どのくらいの声量で——それを言語化するのが台本を書く側の仕事だと思います。声優さんへの伝え方やディレクションのコツは声優ディレクション術にまとめてあります。
ただし、一言一句を縛りすぎると演技の幅が死んじゃいます。方向性を示して、細部は声優さんに委ねる。このバランスがけっこう大事です。
5. SE指示・効果音
効果音の挿入タイミングを指示します。
SE: ドアの開く音
「おかえりー」
SE: スリッパのパタパタ音
SE: 耳かきの音(右耳 → 左耳 の順で、各3分程度)
「気持ちいい? ……ふふ、よかった」
SEの指示がない台本を渡すと、声優さんは効果音のタイミングがわからないんですよね。後から「ここにSE入れたかったのに……」と気づいても、収録をやり直すのは簡単じゃないです。僕はこれで後悔したことがあります(ガチ)。 すべてのSEタイミングは台本の段階で書いておくのがおすすめです。
6. 間(ま)——ケチらない方がいいです
無音の間を入れる指示です。ASMR系では、これが作品の命になります。
「ねえ、今日何かあった?」
(3秒の間 — リスナーの返答を待つ)
「そっか……。大変だったね」
リスナーが「自分に話しかけられてる」と感じるための間です。この間をケチると没入感が一気に崩壊します。
僕の最初の台本は間が少なすぎて、完成品を聴いたとき「なんか忙しいな……」って感じました。あれは反省しました。 秒数を台本に明記するのが大事で、3秒なのか5秒なのか、具体的に書いておくといいです。
文字数と収録時間の関係
ASMR系なら30分で約5,000〜6,000文字、シチュボイスなら6,000〜9,000文字が目安です。
台本の文字数から収録時間を見積もれます。台本の文字数カウントを活用してみてください。
| 話し方 | 1分あたりの文字数 | 30分台本の文字数 |
|---|---|---|
| ゆっくり(ASMR・癒し系) | 150〜200文字 | 4,500〜6,000文字 |
| 普通 | 200〜300文字 | 6,000〜9,000文字 |
| テンポよく | 300〜400文字 | 9,000〜12,000文字 |
演技指示やSE指示は文字数に含めません。間(ま)の多さでも大きく変わります。
僕のASMR系の台本は、30分の作品で5,000〜6,000文字くらいです。間を多めに取る派なので文字数は少なめになります。
ジャンル別テクニック
耳かき・ASMR系は「間」が命、催眠音声は「導入」が命、シチュボイスは「構成力」が命。ジャンルごとに力を入れるべきポイントが違います。
耳かき・ASMR系
間を多めに取るのがポイントです。リスナーがリラックスできるペースが大事ですね。
- SE指示は耳かきの素材(竹・梵天)、位置(右耳・左耳)まで指定する
- セリフの80%以上を囁き声にする
- 環境音(雨音、時計の音などのアンビエント)の指示も忘れずに入れる
催眠音声
導入を丁寧にするのが大事です。
- リラックスさせる導入パートに最低5分はかける
- カウントダウン、繰り返しのフレーズなど催眠誘導の定型文を押さえる
- 覚醒パートは絶対に入れる(催眠から覚ます指示を省くのはNG)
シチュエーションボイス
状況描写をナレーションで処理すると、ちょっと素人っぽい台本になりがちです。キャラのセリフで状況を伝える方が自然ですね。
- キャラの口調や性格を事前に固めておく(キャラクター設定シートの作り方も参考にどうぞ)
- 二人称で直接リスナーに話しかけ、リスナーの返答を想定した間を入れる
- 起承転結を意識する(ストーリーがあるジャンルだからこそ構成力が問われる)
台本作成ワークフロー
プロット→トラック分割→セリフ→SE・演技指示→音読チェックの5ステップで進めると、テンポのいい台本に仕上がります。
ステップ1: まずプロットを書く
いきなりセリフから書き始めると破綻します。これは経験から断言できます。
大まかな流れを箇条書きで整理するところから始めるのがおすすめです。
1. 帰宅したリスナーを出迎える
2. 疲れた様子を心配する
3. 膝枕に誘導する
4. 耳かきを始める
5. 途中で眠そうになるリスナー
6. 子守唄を歌って寝かしつける
この段階でストーリーの流れに無理がないか確認しておきます。プロットが破綻していたら、どれだけ良いセリフを書いても作品は破綻するので……。
ステップ2: トラック分割
プロットをトラックに分割して、各トラックの目標時間を決めます。
ステップ3: セリフを書く
最初は演技指示なしでセリフだけ書くのがいいです。流れを作ってから後で指示を追加した方が、テンポのいい台本になります。いきなり演技指示まで書こうとすると、セリフの流れが分断されてぎこちなくなりがちです。(僕は最初これで失敗しました)
ステップ4: SE・演技指示を追加
セリフの骨格ができたら、効果音と演技指示を肉付けしていきます。
ステップ5: 声に出して読む
完成したら必ず声に出して読んでみてください。黙読では気づかない不自然さ——息継ぎのタイミング、言いにくい言い回し、テンポの悪さ——が音読で見つかります。この段階で台本の文字数カウントを使って尺も確認するのがおすすめです。
僕がやった失敗
セリフの説明的すぎ・演技指示の雑さ・間の不足——この3つは初心者がほぼ必ずやる失敗で、事前に知っておくだけで回避できます。
セリフが説明的すぎた
× 「私は今あなたの右耳を耳かきで掃除しています」
○ 「右耳いくね……。ん、ここちょっと汚れてる」
キャラが状況をいちいち実況するのは不自然ですよね。現実の会話で「私は今あなたの耳を掃除しています」なんて言う人間はいないです。(ロボットか)
演技指示が雑だった
× (いい感じに)
○ (少し照れながら、声を小さくして)
演技指示が具体的でないと、声優さんはどう演じればいいか判断できません。「いい感じに」は声優さんを困らせるだけでした。本当に申し訳なかったです。
間が足りなかった
最初の台本は間が少なすぎました。完成品を聴いて「忙しい」と感じた経験があります。ASMR・癒し系ではセリフの間にたっぷり間を取るのが正義です。秒数を台本に明記しておきましょう。
ネタに困ったとき
ツールでお題を引く・DLsiteの人気作品からヒントを得る・日常のメモを活用するなど、ネタ出しの方法はいくらでもあります。
台本・セリフ生成ガチャでランダムなお題を引いてみるのも手です。台本テンプレートの構成を叩き台にしてもいいですね。DLsiteの人気作品の紹介文からシチュエーションのヒントを得る方法もあります。
僕は散歩中にネタが浮かぶことが多いです。スマホのメモ帳がシチュエーションだらけになっています。(人に見られたら終わる) 日常で「これ音声にしたら面白そう」と思った瞬間を逃さずメモする習慣、これが一番の処方箋だと思っています。
よくある質問
Q. 台本の文字数は何文字が目安?
ジャンルによりますが、30分のASMR作品で5,000〜6,000文字、シチュエーションボイスで6,000〜9,000文字が目安です。間(ま)を多く取るASMR系は文字数が少なくなりますし、テンポの速いシチュボイスは多くなります。台本の文字数カウントで実際に計算してみるのがおすすめです。
Q. プロに台本を依頼する場合の相場は?
1文字1〜3円が目安です。30分台本(6,000文字)で6,000〜18,000円程度になります。クオリティや実績のあるライターさんだと単価は上がりますが、最初の1作目は自分で書いてみるのも全然ありだと僕は思います。(自分で書くと「声優さんに伝わる台本」の感覚がつかめるので)
Q. 台本のフォーマットに決まりはある?
業界標準のフォーマットはないです。ただし、声優さんが読みやすい形式を心がけるのが大事。ヘッダー情報、トラック分け、演技指示、SE指示を含めるのが基本です。台本テンプレートを使えば、必要な要素が揃った状態からスタートできます。
Q. 1トラックの長さはどのくらいがいい?
5〜15分が聴きやすい目安です。シーンの切り替わりで分けると、リスナーが好きなシーンから聴けるので満足度が上がります。30分の作品なら3〜5トラックに分割するのが一般的です。
Q. 台本を書くのにどのくらい時間がかかる?
30分の作品(5,000〜9,000文字)で3〜7日が目安です。プロット作成に1日、セリフ執筆に2〜4日、演技指示・SE指示の追加と音読チェックに1〜2日というのが僕の平均的なペースです。慣れると短くなりますが、最初は焦らず丁寧にやるのがおすすめです。
台本は「書き始めること」がすべて
台本の書き方に完璧なマニュアルはないです。ここに書いたことも、僕の経験則に過ぎません。
ただ一つ確実に言えるのは、書かなければ何も始まらないということです。最初の台本が完璧である必要はないんですよね。プロットを書いて、セリフを書いて、演技指示を付けて、声に出して読む。そのサイクルを回すたびに台本は良くなっていきます。