同人音声の耳かきASMRの作り方:素材選びから収録・編集まで完全ガイド
耳かきASMR同人音声の作り方を実制作の経験から体系化。音を生み出す素材と道具の選び方、バイノーラル収録のコツ、DAWでの編集テクニックまで具体的に解説します。
耳かきASMRは「音の質感」で勝負が決まる
ぬまぬまです。DLsiteのASMRカテゴリで売れている作品を見ると、耳かきジャンルが圧倒的に多いですよね。上位50作品のうち約70%に耳かき要素が含まれています。
でも耳かき作品って、ただ耳かき音を録ればいいわけじゃないんですよ。同じ「耳かき」でも、音の質感ひとつでリスナーの没入感がまるで違います。 綿棒のふわふわした音、竹耳かきのカリカリした音、梵天のさらさらした音——これらを使い分けて、1作品の中で「音の旅」を作れるかどうかが差別化のポイントです。
この記事では、耳かきASMR同人音声を「実際にどうやって作るのか」を、素材選びから収録・編集まで具体的に書いていきます。ASMR同人音声の全体的な作り方は別記事にまとめてあるので、耳かきに特化した内容に絞ります。
耳かき音を生み出す素材と道具——7種類の音を使い分ける
耳かきASMRの音は「道具 × 素材 × 動かし方」の掛け算で決まり、最低でも3種類の音を用意すると作品に厚みが出ます。
耳かき音は実物の耳かき棒だけで作るものではありません。いろいろな素材を組み合わせて、リスナーが求める「気持ちいい音」を作り出します。
素材別の音質マップ
| 道具 | 当てる素材 | 音の質感 | 適したシーン |
|---|---|---|---|
| 綿棒 | シリコン耳(3Dio等) | ふわふわ・柔らかい | 導入、優しい耳かき |
| 竹耳かき | 木材・段ボール | カリカリ・硬め | しっかり耳かき |
| 梵天 | 布・毛糸 | さらさら・くすぐったい | 仕上げ、癒しパート |
| 指 | シリコン耳 | ぐにぐに・肉感 | 耳マッサージ |
| ピンセット | 薄いプラ板 | コリコリ・異物感 | 耳掃除のリアル感 |
| 綿 | シリコン耳に詰める | もふもふ・圧迫感 | 新鮮な変化球 |
| スプーン型耳かき | シリコン耳 | ごりごり・刺激強め | クライマックス |
初めての耳かき作品で揃えるもの
初期投資を抑えたい場合は、この3つから始めてください。
- 綿棒(100円) — ふわふわ系の基本。コンビニで買える
- 竹耳かき(300円) — カリカリ系の基本。100均で十分
- 梵天つき耳かき(500円) — 仕上げ用。さらさら系
この3つで「柔→硬→仕上げ」の流れが作れます。慣れてきたら指やピンセットを足していけばOKです。全部合わせても1,000円以内で揃います。
バイノーラルマイクのセッティング——耳かき音の録り方で8割決まる
マイクと道具の距離は1〜3cmが耳かきASMRの鉄則で、これより離れると「部屋で鳴っている音」になってしまいます。
耳かき音をバイノーラルマイクで録るときのセッティングは、通常の音声録りとはかなり違います。バイノーラル録音の基本はバイノーラル録音の基本と実践テクニックに書いてあるので、ここでは耳かき特有のポイントに絞ります。
距離と角度の基本
| 項目 | 推奨値 | NG | 理由 |
|---|---|---|---|
| マイクと道具の距離 | 1〜3cm | 5cm以上 | 近いほど「耳の中にいる」臨場感が出る |
| 道具の角度 | マイク穴に対して30〜60度 | 真正面 | 正面だと音が硬くなりすぎる |
| 動かす速度 | 1往復2〜3秒 | 1秒以下の高速 | 速すぎるとカサカサしたノイズになる |
| 力加減 | マイクに軽く触れる程度 | 押し付ける | 強すぎるとクリッピングする |
収録環境のチェックリスト
収録前に必ず確認すること:
- エアコンを切る(風切り音が耳かき音に混ざる)
- 時計を外す(秒針の音がバイノーラルマイクに入る)
- 衣服のこすれ音対策(録音中は動きを最小限に)
- ゲインは低めに設定(-12dB〜-6dBの間で耳かき音がピークになるように)
- テスト録音で5秒間聴く(「耳の中にいる感」が出ているか確認)
3Dioでの耳かき収録Tips
3Dio Free Spaceを使っている場合の具体的なコツです。
- シリコン耳は事前に拭く — 汗や皮脂がつくと音が変わる
- 耳穴の奥まで道具を入れない — マイクカプセルに当たると破損のリスク。入口から1cm以内で作業する
- 片耳ずつ録る — 両耳同時に作業すると音が混ざって定位が曖昧になる
- 録音中にマイク本体に触れない — 振動がそのまま録音される
台本の書き方——耳かき音声は「声と音の比率」がカギ
耳かきASMRの台本は「声7:耳かき音3」が安定するバランスで、声を減らしすぎると無言作業配信になり、増やしすぎると耳かきの没入感が失われます。
通常の同人音声より台本設計が特殊なのが耳かきジャンルです。台本の書き方の基本を踏まえたうえで、耳かき特有のポイントを解説します。
声と音のバランス設計
| パターン | 声の比率 | 耳かき音の比率 | 向いている作品 |
|---|---|---|---|
| おしゃべり型 | 80% | 20% | キャラ重視。耳かきは添え物 |
| バランス型 | 60〜70% | 30〜40% | 一番売れ筋のバランス |
| 音重視型 | 30% | 70% | ガチASMR勢向け |
| 無言型 | 5%以下 | 95% | ニッチ。好きな人は大好き |
DLsiteの耳かき作品で売上上位に入っているのはバランス型が大半です。キャラクターの声で状況を説明しつつ、耳かきの音でリスナーを気持ちよくさせる。この両立が耳かきASMRの醍醐味です。
台本に書くべき「音指定」
台本には声優さんの台詞だけでなく、耳かき音の演出指示を具体的に書きます。
【右耳・綿棒・ゆっくり】
♪ 耳かき音(ふわふわ系): 約30秒
ゆゆ「ん〜、右の耳、ちょっと汚れてるね……ゆっくりきれいにするから、じっとしててね」
【右耳・竹耳かき・しっかりめ】
♪ 耳かき音(カリカリ系): 約20秒
ゆゆ「あ、ここ……ちょっとカリカリする。我慢できる?もうちょっとだけ……」
台詞量の目安は台本の文字数カウントで確認できます。30分作品なら台詞は約4,000〜6,000文字が目安です。
DAWでの編集テクニック——耳かき音を「気持ちいい音」に仕上げる
耳かき音の編集で最も重要なのはEQで200Hz以下をカットすることで、これだけで「こもった音」が「クリアな耳かき音」に変わります。
収録した耳かき音はそのままだと使いにくいことが多いです。ここではDAWソフトの選び方で紹介した主要DAWでの編集テクニックを解説します。
耳かき音のEQ設定
| 周波数帯 | 処理 | 理由 |
|---|---|---|
| 200Hz以下 | ハイパスフィルタでカット | 部屋の低周波ノイズとマイクの近接効果を除去 |
| 1kHz〜4kHz | +2〜3dB軽くブースト | 耳かきの「カリカリ」「さらさら」の質感を強調 |
| 8kHz以上 | -1〜2dBカットまたは触らない | キンキンしすぎを防ぐ。素材による |
ノイズ除去のコツ
耳かき音は微小な音なのでノイズが目立ちやすいです。
- 収録前に10秒間の無音を録る — これがノイズプロファイルになる
- iZotope RXのSpectral De-noiseを使う — 耳かき音を消さずにフロアノイズだけ除去できる。Reduction値は6〜12dBが目安。強すぎると耳かき音まで削れる
- EQで対処できないノイズだけRXを使う — RXは便利だが使いすぎるとアーティファクトが出る
音量オートメーション
耳かき音は動的な音なので、音量が大きくなりすぎる瞬間があります。
- コンプレッサー: Ratio 2:1〜3:1、Attack 10ms、Release 100ms。軽くかけるだけ
- 手動オートメーション: 「カリッ」と大きな音が入った部分だけ手で下げる。コンプだけで処理すると全体がのっぺりする
- リミッター: 最終段に-1dBで入れて、万が一のクリッピングを防止
30分耳かき作品を1本作る手順——全工程を時系列で
企画から納品まで約2〜3週間。内訳は台本1週間、収録1日、編集3〜5日が現実的なスケジュールです。
初めて耳かき作品を作る人向けに、全工程を時系列で並べます。
工程表
| 工程 | 所要日数 | やること |
|---|---|---|
| 1. 企画 | 1日 | コンセプト決め。キャラ・シチュ・尺・価格 |
| 2. 台本執筆 | 5〜7日 | 台詞+音指定。台本テンプレートを活用 |
| 3. 素材準備 | 1日 | 耳かき道具・収録環境の準備 |
| 4. 収録 | 1日(3〜5時間) | 声優さんの台詞録り + 耳かきSE録り |
| 5. 編集 | 3〜5日 | ノイズ除去→EQ→ミキシング→マスタリング |
| 6. 販売準備 | 1〜2日 | サムネイル・紹介文・タグ設定 |
| 7. 公開 | 1日 | DLsiteに投稿→審査→販売開始 |
予算の目安
| 項目 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 声優出演料 | 10,000〜30,000円 | 30分作品、新人〜中堅。声優の探し方と相場 |
| イラスト | 15,000〜50,000円 | サムネイル+紹介画像 |
| 耳かき道具 | 1,000円以内 | 前述の3点セット |
| SE素材(購入の場合) | 0〜3,000円 | 自作なら不要 |
| DAWソフト | 0円 | Reaperは個人利用60日無料→$60 |
| 合計 | 約26,000〜84,000円 |
価格設定は同人音声の価格設定ガイドを参考にしてください。30分耳かき作品なら770〜990円が売れやすい価格帯です。
よくある質問
Q. 耳かき道具はどこで買えますか?
100均(ダイソー、セリア)で竹耳かきと梵天つき耳かきが手に入ります。綿棒はコンビニで十分です。音にこだわるなら匠の技シリーズの竹耳かきがおすすめで、しなりが良いぶん自然な音が出ます。
Q. 3Dioを持っていなくても耳かきASMRは作れますか?
作れます。Roland CS-10EM(約1万円)をマネキンヘッドに装着すれば、簡易的なバイノーラル録音環境になります。3Dioほどの自然さは出ませんが、初めての1作品には十分です。詳しくは録音機材ガイドで解説しています。
Q. 耳かき音がうまく録れません。コツはありますか?
よくある失敗は「道具を強く押しつけすぎ」と「動きが速すぎ」です。マイクに触れるか触れないかくらいの力加減で、1往復2〜3秒のゆっくりした動きを心がけてください。また、テスト録音を必ず聴き返して「耳の中にいる感」が出ているか確認してから本番に入りましょう。
Q. 耳かき音とセリフを同時に録れますか?
同時収録は上級者向けです。初めてなら声優さんの台詞と耳かきSEを別トラックで録って、DAW上でタイミングを合わせる方法が確実です。同時収録だと声が耳かき音に被って編集しにくくなります。
Q. 耳かき作品の適切な尺はどのくらいですか?
DLsiteで売れている耳かき作品は30分〜60分が主流です。初めてなら30分をおすすめします。耳かきだけで60分は展開に工夫が必要ですが、30分なら「導入→メイン耳かき→仕上げ→おやすみ」のシンプルな構成で成立します。